前回の記事では、育成就労制度の特徴を現行の技能実習制度と比較しながら紹介しました。
本記事では、育成就労制度の施行が企業にもたらすメリットとともに、注意点について解説していきます。
目次 おさらい~育成就労制度とは~ 育成就労制度のメリット 受け入れ企業の注意点 特定技能制度の活用 まとめ |
おさらい~育成就労制度とは~
出典:「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」法務省https://www.moj.go.jp/isa/content/001415280.pdf
育成就労制度とは、現行の技能実習制度に代わる新たな外国人雇用制度のことです。
政府は2027年の施行を発表しており、2030年までの3年間を移行期間としています。
「外国人の人権保護」「外国人材のキャリアアップ」「安心安全・共生社会」の3つに重点を置き、特定技能1号の技能を有する人材を育成するとともに、産業分野の人手不足解消を目的としています。
以下の表は、現行の技能実習制度との比較を一覧にしたものです。
技能実習制度(現行) | 育成就労制度(2027年~) | |
目的 | 「人材育成」と「国際貢献」 | 「人材育成」と「人材確保」 |
在留期間 | 最長5年 | 原則3年 |
対象職種 | 90職種165作業 | 12分野∔4分野(見込み) |
転籍の可否 | 原則不可 | 本人の意向による転籍が可能 |
就労開始時の日本語能力 | 原則なし | 日本語能力試験N5相当 |
前述の通り、育成就労制度は3年間で特定技能1号の水準への育成を目指すものであるため、現行制度と比べても特定技能制度との関係性がとても強くなります。
育成就労制度のメリット
育成就労制度が実施されることによる企業側のメリットは、主に2点あります。
。高い日本語能力を持った人材を受け入れられる 。長期雇用が可能になる |
- 高い日本語能力を持った人材を受け入れられる
現行の技能実習制度では、日本語能力は問われていませんが、育成就労制度では、日本語能力A1レベル(JLPT N5相当)が求められます。
よって、日本語を一から教える必要がなく、就労当初から基礎的な日本語能力を持った人材を受け入れることができます。
ただし、受け入れ企業は外国人材に対し、より高度な日本語教育の機会提供と支援を継続することが求められます。
- 長期雇用が可能になる
育成就労制度では、3年間の就労後に特定技能1号の在留資格を取得すれば、引き続き日本で働くことができます。
さらにハイレベルの特定技能2号の試験に合格すれば、母国にいる家族を日本に呼び寄せ、永続的に就労を続けることも可能です。
外国人材の長期雇用が可能になれば、企業は人材確保の安定化を図ることができ、雇用する外国人材へも安定した生活基盤や職場環境を築くことができるでしょう。
- 受け入れ企業の注意点
育成就労制度の施行に伴い、企業はどのようなことに注意したらよいでしょうか?
。費用負担が大きくなる可能性 。受け入れ可能職種の減少見込み 。教育や研修を充実させる必要性 |
- 費用負担が大きくなる可能性
育成就労制度では、外国人が借金をして日本に入国するという問題を解消するため、基本的に受け入れ先の企業が費用を負担することになります。
渡航費や手数料などは外国人材の出身国や利用する機関によって金額が異なりますが、一般的には一人あたり500,000円程度を負担することになる可能性があります。
また、育成就労制度では外国人材の転籍が可能になるため、立地や給与水準が良い企業での就労を考える人が増えると予想されます。そのため育成就労制度で外国人を雇用する企業全体の給与水準が上がると考えられます。
- 受け入れ可能職種の減少見込み
育成就労制度における受け入れ可能職種は、従来の特定技能12分野に4分野が加わった、計16分野となる予定です(在留資格「育成就労」から「特定技能」への移行をスムーズにするため)。
これは、現行の技能実習制度の90職種165作業に比べると、受け入れ可能な職種は減っていることに注意が必要です。
ただし、今後の議論によって分野の追加・拡大があるかもしれません。
- 教育や研修を充実させる必要性
育成就労制度では、「技能の習得」や「知識の向上」が重視されており、受け入れ企業には外国人材に対する教育や研修を充実させることが求められます。
具体的には、外国人材向けの業務マニュアル整備や、日本語教室への案内・自社での日本語教育などが挙げられます。
特定技能制度の活用
育成就労制度は、技能実習制度の様々な課題を改善した制度になる見込みですが、採用におけるコストの増加や受け入れ可能人数枠などの面からも、はじめから特定技能制度を活用した外国人雇用をおすすめします。
「特定技能」は入国前の技能試験と日本語能力試験の合格が要件であり、一定の技能と日本語能力を有するため、「技能実習」や「育成就労」と比べて即戦力としての活躍が期待できます。
まとめ
本記事では育成就労制度で外国人を雇用する際のメリット・注意点をお伝えしました。
育成就労制度は施行前であり、省令作成途中の段階です。
今後内容が変更される可能性がありますので、政府の発表に注目しましょう。
今後も外国人材に関する様々なトピックを紹介していきます。
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