近年、増加し続けている技能実習生の「失踪」問題。
技能実習制度にまつわる報道でも「失踪」に関するものが多く取りあげられ、気になる企業様も多いのではないでしょうか。
本記事では、技能実習生の失踪問題について、失踪の原因、受け入れ企業へのペナルティや対応策などを紹介していきます。
目次 失踪の実態 失踪の原因 受け入れ企業へのペナルティ もし失踪者を出してしまったら? まとめ |
失踪の実態
厚労省によると、2023年時点で日本における技能実習生の総数は404,556人とされています。コロナ禍の影響を除けば、全体として技能実習生数は増加傾向にあります。
そのうち、失踪者の数は2022年時点で9,004人にのぼり、こちらも増加が続いているのが現状です。
※グラフは以下を参考に作成
「外国人技能実習制度について」法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官
「技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年)」法務省
失踪の主な原因
失踪の原因には、受入企業側に問題があるケースと、技能実習生側に問題があるケースがあります。
- 受入企業側に問題があるケース
- 法令違反行為
- 労働時間
- 労働基準法では、「法定労働時間は1日8時間・週40時間以内」「時間外労働は月45時間・年360時間以内」が原則であると定められています。
- それにも関わらず、実習生に長時間労働を強いたりタイムカードを改ざんしたりする企業も存在します。
- 低賃金、残業代の未払い
- 賃金が最低賃金以下であったり、残業代を支払わないなどの事例があります。
- 人権侵害行為
- パワーハラスメント
- 言葉が通じないからといって暴言を浴びせる、暴行を加えるなどといったパワハラ行為が挙げられます。
これらの事例は、受入企業が技能実習生を「安い労働力」としてみなす人権意識の欠如によるものです。
技能実習生は転職という選択肢が基本的にないため、状況から逃れるために失踪してしまうのです。
当然のことながら、技能実習生は日本人社員と同じように労働基準法が適用されますし、企業は彼らの人権を守る義務があります。
- 技能実習生側に問題があるケース
- 帰国したくない
- 技能実習生は実習期間が終了すると、母国に帰国しなければなりません。しかし彼らの中には、実習が終わっても日本で働き続けるために、失踪して不法就労をする人がいます。
- ブローカーの存在
- 悪質なブローカーから、より良い条件で別の仕事に勧誘された結果、失踪してしまうケースがあります。
受け入れ企業へのペナルティ
技能実習生が失踪してしまった場合、受入企業にはどのようなペナルティがあるのかをみていきましょう。
. 技能実習生の受け入れ停止 . 特定技能人材の受け入れに制限 . 優良認定要件の減点 . 企業名の公表 |
- 技能実習生の受け入れ停止
企業の不正行為が原因で技能実習生の失踪が多発した場合、技能実習生の受け入れが3年間停止されます。
技能実習生の新規受け入れだけでなく、在留期間の更新や申請手続きも停止されます。
よって、在籍している技能実習生は、実習を継続するために新たな実習実施機関を探さなくてはなりません。
また、3年間の停止期間が経過した後、自動的に技能実習生の受け入れが再開できるわけではないことに注意しましょう。
入国管理局に再発防止策を提出し、問題再発の可能性がないと判断された場合にのみ、受け入れを再開することができます。
- 特定技能人材の受け入れに制限
技能実習生の失踪者を出してしまった場合、特定技能人材の受け入れにも影響がでます。
特定技能人材の受け入れ要件のうちのひとつに、「1年以内に受け入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと」という項目があります。
つまり、法令違反行為や人権侵害行為が原因で失踪者を出してしまった場合、特定技能人材の受け入れができなくなってしまいます。
特定技能に限らず、その他の在留資格の受け入れにも影響が出る可能性もあります。
- 優良認定要件の減点
法務省は優良な実習実施者の要件を定めており、優良認定を受けると技能実習期間の延長や受け入れ人数枠の拡大など様々なメリットがもたらされます。
優良認定を受けるためには120点満点中66点以上が必要です。
しかし、失踪者が出ると50点の減点対象になる可能性があり、場合によっては優良認定を受けられないこともあります。
優良認定が受けられなくなると、その後の技能実習生の受け入れに影響が及び、事業の推進に支障が出る可能性があります。
- 企業名の公表
出入国在留管理庁は、失踪防止のための施策として「失踪技能実習生を雇用した企業名の公表」を行っています。
多数の失踪者を出している企業として名前を公表されれば企業のイメージダウンにつながり、今後の採用活動に悪影響が出るでしょう。
このように、技能実習生の失踪者を出してしまうと企業にとって多くのデメリットがあります。
では、もし失踪者を出してしまったらどうしたらよいでしょうか?
もし失踪者を出してしまったら?
1.監理団体に連絡 2. 警察に捜索願 3. 寮の状況確認 4. 技能実習機構(OTIT)に連絡、「技能実施困難届出」 5. を提出給与の支払い手続き 6. 技能実習生の退職手続き |
- 監理団体に連絡
技能実習生が失踪してしまったら、すぐに監理団体に連絡しましょう。
状況を確認し、受け入れ企業と共に失踪した技能実習生を探します。
- 警察に捜索願
事故や事件に巻き込まれている可能性もあるため、警察に相談し、捜索願を出しましょう。
- 寮の状況確認
複数の実習生が共同で生活していることが多いので、話を聞き、状況を確認しましょう。
- 技能実習機構(OTIT)に連絡
失踪者が戻る見込みがなければ、技能実習機構に「技能実施困難届出」を提出する必要があります。
OTIT外国人技能実習機構「技能実習実施困難時届出書」https://www.otit.go.jp/files/user/docs/abstract_056.pdf |
- 給与の支払い手続き
技能実習生が失踪したとしても、失踪以前の給料は給料日に支払う必要があります。未払いは不正行為に該当するため注意しましょう。
- 技能実習生の退職手続き
一定の期間を経ても失踪者が見つからない場合、社会保険や年金などからも脱退し、退職手続きを行ってください。
まとめ
本記事では、技能実習生の失踪の原因や受け入れ企業へのペナルティ、そしてその対応策について紹介しました。
技能実習制度を利用して来日する外国人の増加に伴う技能実習生の失踪を防止するためにも、受け入れ企業側も対策を講じる必要があります。
次回はPart2として、失踪の防止策について解説します。
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